6月になりましたね。暑くなってきた中ですが、がんばりましょう。 設問1 ヒトで尿素を合成する器官は何か?その反応回路を何といううか?尿素の化学式と、 この回路全体の反応式を書け。この反応はATPのエネルギーを必要とするか? ↓ ↓ ↓ ↓ (考える) ↓ ↓ 答 ・肝臓 ・オルニチン回路 ・尿素(NH2)2CO ・反応式 2NH3+CO2+H20 →2(NH2)2CO+2H2O ・ATP必要 解説 尿素「合成」は肝臓で、「排出」は腎臓なので注意。 その合成反応の出発にオルニチンがあるのでオルニチン回路とよばれる。「尿素回路」 という言い方もあるのだが、入試においては尿素回路と書くと「オルニチン回路を知らないために逃げた」 と判断されて減点される可能性があるので「オルニチン回路」と書いたほうがよい。 (同様にホルモンの所で述べたように「チロキシン」を「甲状腺ホルモン」と書くと減点される可能性がある) 尿素を構造式で書くと H | NーH | C=O | N−H | H であり、 アンモニア(NH3)2つを 真ん中の二酸化炭素(CO2)でつなげたような化合物とわかる。 つまり合成の時は 2NH3+CO2+H20 →2(NH2)2CO(尿素)+2H2O という反応となる。 H2Oは1分子投入、2分子発生で、 差し引き1分子排出されていることがわかる。NH3の2分子とCO2の結合の際、差し引き1分子H20が排出されているのは構造式を見るとわかるでしょう。 ただなぜ1分子投入、2分子発生なのかは次に説明します。 物質合成の反応なのでATPのエネルギーを使う。 ★設問2 以下の図はオルニチン回路の図である。1〜8に適切な名称あるいは化学式を書け。 ↓ ↓ ↓ (考える) ↓ ↓ 答 1オルニチン 2シトルリン 3アルギニン 4アンモニア(NH3) 5二酸化炭素(CO2) 6水(H2O) 7尿素((NH2)2CO) 8アルギナーぜ 解説 昨日アカパンカビの一遺伝子一酵素説 を学んだ後、オルニチン回路という別分野に急に飛んだわけであるが、実は オルニチン→シトルリン→アルギニン という合成順番は同じなのでセットで理解してしまうとよい。 まずはこの順番は知っておいたほうがいいから、 「おっしゃあ」と気合を入れておさえよう。 「お(ルニチン)→し(トルリン)→あ(ルギニン)」 である。 合成するのだがら 分子の大きさは オルニチン(小) シトルリン(中) アルギニン(大)である。 回路だから大→小に戻る時に大きな分子が排出されるはずであると考える。この図は非常に詳しく出題された時の場合であり、 6(H20)が書いてあるので見えにくいが、6がないとすると、回路から外に飛び出る→は7に向けてのみだから 1オルニチン(小) ↓ 2シトルリン(中) ↓ 3アルギニン(大) ↓ ↓→7尿素 ↓ 1オルニチン(小) とわかる。 酵素8はアルギニンを分解するのでアルギナーぜという。 次に 1オルニチン(小) ↓ 2シトルリン(中) ↓ 3アルギニン(大) における物質の出入りの解釈である。 恒常的に尿素(NH2)2COを生みだす回路なので、 NH3が2分子、CO2が1分子入るということがわかる。 NH3は1→2、2→3で1分子ずつ入り、 CO2は1→2で入る。 CO2が1→2で入ることさえおさえておけばできる。 1オルニチン(小) ↓ ↓←NH3 ↓←CO2 ↓ 2シトルリン(中) ↓ ↓←NH3 ↓ 3アルギニン(大) 最後に水の解釈であるが、たぶん入試の出題の 多くは水は無視して出題されるので安心してほしいが、考え方としては簡単である。 分子が結合していく時は、「脱水縮合」(縮合重合)で水が排出され、分子が分解される時には「加水分解」で 水が加えられるという化学の原則を思い出せば、 1オルニチン(小) ↓→H2O 2シトルリン(中) ↓→H20 3アルギニン(大) ↓←H20 1オルニチン(小) とわかり、最初の化学式で説明を保留した2H20投入、H20排出というのとがわかる。 以上すべてまとめると、 1オルニチン(小) ↓ ↓←NH3 ↓←CO2 ↓→H2O ↓ 2シトルリン(中) ↓ ↓←NH3 ↓→H20 ↓ 3アルギニン(大) ↓ ↓←H2O ↓(酵素アルギナーぜ) ↓→尿素 ↓ 1オルニチン(小) 2NH3+CO2+H20 →2(NH2)2CO(尿素)+2H2O ですが、以上を理解していただいた上で、もう一度全部空白の図を見返してみると、よくわかるでしょう。 なお、本設問では6(水)の存在と位置を重視したが、無視して水以外の物質の出入りだけを聞く場合が多いので、その場合は6の部分は省略して考えてください。 |