●褐色脂肪細胞とは? 脂肪を蓄える脂肪細胞には通常の脂肪貯蔵の働きをする「白色脂肪細胞」の他に、「熱産生」を活発にする「褐色脂肪細胞」があります。 実際、熱が失われがちな出生直後の生物に多く、成長とともに体温調節機能が発達してくると減ってきます。また「冬眠腺」との別名もあり、秋・冬(冬眠期)に増加します。 褐色になっているのはミトコンドリアが多いためで、そのミトコンドリアで発熱をします。 設問 「通常の1molのグルコースを基質とした好気呼吸での放出されるエネルギー(688Kcal)のうち、ATPに蓄積されるエネルギーは何%か? ただしADPとリン酸からATPとH2Oを生成するエネルギーは1mol8Kcalと考えよ。 またATPに蓄積されなかったエネルギーは何になるか?」 ↓ ↓ ↓ (しばし計算式を考える) 解答 「38(ATP)×8/688 ×100% =44% 残り56%は熱となる」 ●解説 好気・嫌気呼吸で解放されたエネルギーのうちある比率のものはATPの化学結合のエネルギーとして蓄えられますが、残りは熱として放出されます。 恒温動物ではその熱をうまく「体温保持」に役立てるわけです。「筋・肝」は好気呼吸を活発にする「代謝」臓器・器官であると同時に熱産生臓器・器官なわけです。 ●褐色脂肪細胞は意図的にATP作りを減らし熱産生を増やす。 脂肪代謝は高校生物では扱いませんが、分解産物がクエン酸回路に合流し、あとはグルコース分解の好気呼吸と同じ過程を経ます。 したがって、ATP生成の大部分は、ミトコンドリアのクリステのATPシンターゼでのH+移動によるものです。 褐色脂肪細胞のミトコンドリアのクリステでは、ATPシンターゼの他に UCP(uncoupling protein、非共役タンパク)・ 別名サーモゲニン(thermogenin、「熱の素」の意味)というタンパクがH+の通り道となります。 H+がATPシンターゼを通る時はATP生成と「共役」しますが、サーモゲニンを通る時はATP生成と「共役」せず(非共役)、熱が産生されます。 ●酸化ストレスと抗酸化酵素系 また一般のミトコンドリアの話に戻ります。 ミトコンドリアのクリステは朝述べたように、最終的にO2と結合する過程を含むことで大量のATPを作るのですが、その過程で副産物ができます。 酸素に過剰な電子が結合した「活性酸素」ができます。これはDNAや膜を破壊したり、酵素を不活性化するなど様々な害をもたらし、この害を「酸化ストレス」と言います。 したがって生体にはこれらの「活性酸素」を除去するSOD(super-oxide dismutase、活性酸素除去酵素)や 「カタラーゼ」(2H2OS→2H20+O2を促進)があるのです。これらを抗酸化酵素系といいます。 ●グルタチオン(メルマガその16) も酸化ストレス除去に活躍 グルタチオンは3アミノ酸の1つにシステインを含むペプチドです。システインの側鎖のSHが大切な働きをするのでそこを強調してGSHと表記します。 このGSHと過酸化物ROOH(Rが炭素骨格部分でアルコールOHに比べ過剰にOが結合した過酸化物です)を反応させる酵素がグルタチオンペルオキシダーゼです。 2GSH+ROOH→GSSG+ROH+H20 の反応が起きます。解説すると 1、2GSHがSS結合し2Hを放出(GSSH生成) 2、その2HがROOHからOを奪いH2Oとなる。 3、結果としてROOH(過酸化物)はROH(アルコール)に還元される。 (4GSSGは再び他から2Hを与えられ2GSHに戻る) このように「グルタチオン」は細胞内で抗酸化反応に活躍していることもあってペプチドのアミノ酸配列の問題として出題されるわけです。 なお、他の抗酸化物では「トコフェノール」「βカロチン」「アスコルビン酸(ビタミンC)などが有名で、 「体にやさしい食品」などにそのような表示がありますので、今度買い物の時注意してみてください。 |