今日の後半は発展編です。 (画像なし) まず化学の知識も入れながら窒素循環をまとめてみましょう。 設問1 「次のイオン・単体中の窒素の酸化数を求めよ 1,NH4+ 2,NO2- 3,N03- 4,N2」 ↓ ↓ ↓ (しばし考える) ↓ ↓ 解答 「NH4+中はー3 (x+4=+1) NO2-中は+3 (x+(-2)×2=-1) NO3-中は+5 (x+(-2)×3=-1) N2中はO NH4+(−3) ↓酸化 NO2-(+3) ↓酸化 NO3-(+5) ↓還元 N2(0) と酸化数でも確認できる NH4+(酸化数−3) ↓ ↓亜硝酸菌 ↓(酸化) ↓ NO2-(酸化数+3) ↓ ↓硝酸菌 ↓(酸化) ↓ NO3-(酸化数+5) ↓ ↓脱窒菌 ↓(還元) ↓ N2(酸化数0) ↓ ↓窒素固定細菌 ↓(還元) ↓ NH4+(酸化数-3) (振り出しに戻る) 自然界にはNの酸化還元のサイクル(窒素循環)があり、それぞれに位置する細菌が存在することが確認できます。 なお普通窒素循環とは「有機物中の窒素」 に注目した生態系サイクルでの動きを示すことが多いですが、 このように窒素化合物の酸化還元に注目した 窒素循環のとらえ方もあります。 さてNでイメージをしていただいた上でSにいきます。 設問2(09秋田大/化学) 「次の化合物・単体中の硫黄の酸化数を答えよ 1,H2S 2,S8 3,SO2 4,H2SO4」 ↓ ↓ ↓ (しばし考える) ↓ ↓ 解答 「H2S中は-2 (2+x=0) S8(単体硫黄)中はO SO2中は+4 (x+(-2)×2=0) H2SO4中は+6 2+x+(-2)×4=0」 ●硫黄循環 H2S(酸化数ー2) ↓ ↓硫黄細菌 ↓紅色硫黄細菌 ↓緑色硫黄細菌 ↓酸化 ↓ S(酸化数0) ↓ ↓ ↓硫黄細菌 ↓(紅色硫黄細菌) ↓(緑色硫黄細菌) ↓(酸化) ↓ SO4の2-(酸化数+6) ↓ ↓硫酸還元菌 ↓(還元) ↓ ↓ S(酸化数0) ↓ ↓硫酸還元菌 ↓(還元) ↓ H2S(酸化数-2) (振り出しに戻る) まずはスクロールを戻しながらNを基礎にSと比較して ほぼ相似形のなっていることを確認してください。 その上で解説します。 ●硫黄細菌・紅色硫黄細菌・緑色硫黄細菌は2段階の反応が可能 これらの細菌はH2S→Sを第一段階の反応とします。普通これしか高校生物では聞かれません。 しかし更にS→SO4の2-(硫酸イオン)の反応を進めることができます。両方、同じ酸化反応で同じ流れの延長です。 (ただし光合成細菌(紅色硫黄細菌・緑色硫黄細菌) は嫌気性のためO2が少ない環境にいるので 第二過程の反応はあまり得意ではありません。) ●脱窒菌・窒素固定細菌は同じ還元の流れ N2を主役にしてみるとこの両者は生産(脱窒菌)・消費(窒素固定細菌)で反対ですが、酸化還元という視点でいうと NO3-(酸化数+5) ↓ ↓脱窒菌 ↓(還元) ↓ N2(酸化数0) ↓ ↓窒素固定細菌 ↓(還元) ↓ NH4+(酸化数ー3) と同じ還元の流れであることを確認してください。 ●Sの還元の流れは硫酸還元菌が一括して行う Nの還元の流れは脱窒菌・窒素固定細菌が分担して 行っているのに対し Sの還元の流れは硫酸還元菌が一括して行っていることを確認してください。 SO4の2-(酸化数+6) ↓ ↓硫酸還元菌 ↓(還元) ↓ ↓ S(酸化数0) ↓ ↓硫酸還元菌 ↓(還元) ↓ H2S(酸化数-2) (振り出しに戻る) ●「酸化・還元」を基本にした細菌の新しい命名法 先に述べたように細菌の名称は反応生成物の名称がつけられているために、「亜硝酸菌は実際はアンモニアを基質にしているのだ 」と一々考え直さなければいけません。 皆さんがうける2010年度入試はそれが基本だからそれに対処できるようにしておきましょう。 しかし、最近はこのややこしい名称の付け方をやめ、基質の名称に、その細菌が酸化か還元かどちらかをするか名付ける方式になりつつあります。 たぶん2020年入試ではこちらが基本になっているでしょう。 「硫酸還元菌」はそのような命名をしているので名前を見ただけで一発で基質と反応の基本がわかります。 同様な名称変更で NH4+(酸化数−3) ↓ ↓アンモニア酸化細菌 ↓(亜硝酸菌) ↓ NO2-(酸化数+3) ↓ ↓亜硝酸酸化細菌 ↓(硝酸菌) ↓ ↓ NO3-(酸化数+5) ↓ ↓硝酸還元菌 ↓(脱窒素菌) ↓ N2(酸化数0) ↓ ↓もとの名のまま ↓窒素固定細菌 ↓↓ NH4+(酸化数-3) (振り出しに戻る) と呼ばれることがあります。08東大ではこの名称で問われましたのでもしそう出てもびっくりしないでくださいね。 |