今日は設問ではなく解説です。 ニューロン(神経細胞)の興奮の伝導・伝達は、初歩の問題、たとえば脊髄反射などでは、1本線で連続的につながっている図として説明される。その場合は前のニューロンが興奮すると、伝達が行われれば確実に次のニューロンも興奮すると説明される。 しかし、実際はニューロンには複数の他のニューロンからの接続(入力)があることが実際には多く、特に脳では非常に多数のニューロンからの接続(入力)がある。その場合、どのような場合ニューロンは興奮するのか? 1本のニューロンからの入力では興奮が起こらず、2本のニューロンからの同時入力では興奮が起きるモデルで考えてみよう。 シナプス前細胞による神経伝達物質の放出の結果、シナプス後細胞に生じる膜電位の変化を「シナプス後電位」という。 次の細胞に興奮を引き起こしやすいアセチルコリンなどの神経伝達物質でのシナプス後電位は、Na+流入であり、シナプス後電位は少し+側になる(静止電位の−の程度が減ずる)。これを興奮性シナプス後電位(EPSP、excitatory postsynaptic potential) という。 一方、次の細胞に興奮の抑制をしやすいGABA(γーアミノ酪酸)などの神経伝達物質でのシナプス後電位は抑制性シナプス後電位 (IPSP、inhibitory postsynaptic potencial)という。 EPSPを生じさせるシナプスを興奮性シナプス、IPSPを生じさせるシナプスを抑制性シナプスという。 @1本の興奮性シナプスからのEPSPでは興奮は起きない。EPSPが少し時間を経てもう一度あっても次のニューロンの興奮は起きない。 A1本の興奮性シナプスからのEPSPでも、非常に短い時間で連続的に起きると、次のニューロンの興奮が起きる。これを「時間的加重」という。 B2本の興奮性シナプスからのEPSPが同時に起きると、次のニューロンの興奮が起きる。これを「空間的加重」と呼ぶ。 C1本の興奮性シナプスからのEPSPがあっても、抑制性シナプスからのIPSPが同時にあると次のニューロンの興奮は起きない。 これはを図示すると以下のようになる。図で赤はEPSP、青はIPSPを示す。 なお電気的に説明をしたのがそれぞれの図の下のグラフである。次のニューロンが興奮する閾値があり、その閾値に達すれば、活動電流(高い山)が発生する。 @Cはその閾値に達することができず活動電流は発生しない。Aは時間的加重で閾値に到達、Bは空間的加重で閾値に到達し、活動電流を生じる。 |