●06東大後期(部分) ほ乳類の心臓は、左心と右心とにわかれている。 左心は左心室を血液ポンプとして体循環を受け持ち、左心室から大動脈へ送られた血液は、大静脈を経て右心房へと戻ってくる。 右心は右心室を血液ポンプとして肺循環を受け持ち、右心室から肺動脈へと送られた血液は、肺動脈を経て左心房へと戻ってくる。 このような閉鎖血管系においては、大動脈の血液流量と肺動脈の血液流量は同じとなるように思われるが、 実際には、 (a)変則的な循環経路があるために、大動脈の血液流量は肺動脈の血液流量よりも若干多い 心拍出量は、心拍数すなわち心臓の拍動数と一回拍出量すなわち左心室が一回の収縮で拍出する血液量との積である。 一方、血圧は、血管抵抗すなわち血管の収縮や拡張により変化する流路抵抗と心拍出量との積で決まる血管内の血液の圧力である。 心拍数は自律神経系による調節を受けており、また、血管の収縮や拡張も交感神経による調節を受けている。 さらに、組織の血管は、組織でのpHの低下や酸素濃度の低下によっても拡張するため、心拍出量や血圧を決定する要因は多岐にわたるが、 基本的には、心臓は体のエネルギー代謝を満足させるために十分な血液量を拍出するように調節されている。 血圧の調節系には自律神経系を介した反射的な調節が存在するが、自律神経系は上位中枢からの支配も受けており、その働きは (b)感情や運動などの日常活動で変化するため、血圧は状況に応じ変化する。 心拍出量に関与するもう一つの重要な因子としては、静脈還流量すなわち単位時間あたりに静脈から心臓へ戻る血液量がある。 基本的に、血液が十分に心臓に戻ってこなければ、右心室は十分な血液量を拍出できないため左心室も十分な血液量を拍出できない。 また、左心室が十分な血液量を拍出しなければ十分な血液量が心臓に戻ってこない。血管の中を循環している血液の総量を循環血液量という。 循環血液量は、肺に18%、心臓に12%、動脈内に11%、静脈内に54%および毛細血管内に5%分布している。このように静脈内には多くの血液が分布しているため、静脈環流量は循環血液量にも依存する。 また、静脈還流量は重力によっても影響を受ける。 (以下の部分は明日) 問1 (a)について。変則的な循環経路では、血液は(1)大動脈と肺動脈のどちらの動脈から流入し、 (2)大動脈と肺動脈のどちらの静脈へ流出していると考えられるか答えなさい。 問2 (b)について。緊張したり興奮したときには、交感神経の働きが亢進(こうしん)して、心拍数が増加し血圧も高くなる。 これに対して、軽い運動をしたときには、同様に交感神経の働きが亢進して心拍数は増加するが、血圧はあまり高くならない。 その理由を、組織でのエネルギー代謝と関連づけて90字以内で説明しなさい。 ↓ ↓ ↓ (考える) ↓ ↓ 解答例 「問1(1)大動脈 (2)大静脈 問2 血圧は心拍出量と流路抵抗の積になる。軽い運動をした時は、心拍出量の増加は同じでも、組織の呼吸が増加しpHや酸素濃度低下により血管拡張して流路抵抗が減るので。」 ●解説1 冠循環とは? 血液循環は 「左心室→大動脈→末端組織→大静脈→右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→(左心室)」 で直列なので大動脈血液流量=肺動脈血液流量となりそうですが、 実際は厳密には、文章にあるように 大動脈血液流量>肺動脈血液流量です。 (ただしこのことは発展編でのみ聞かれるので初歩の問題の時は「ほぼ等しい」と考えておいてよいです) 実は大動脈からすぐに分岐し、結果的に大静脈に戻る「冠循環」というのがあります。 これは心臓の外側に張り巡らされ、心臓の筋肉に酸素やグルコースを供給する循環です。 心臓が「かんむり」をかぶったみたいなので「冠循環」といいます。ここはコレステロールなどが沈着しやすく 閉塞すると心臓の筋肉に酸素が送られなくなり心疾患・心停止の原因となる場所で医療的に非常に重要な循環です。 ●血圧の要素=心拍出量×血管抵抗 本当はもっと関係する要素があるのですが、単純化すると上記のとおりです。だから血管がしなやかだと、 多少心拍が上昇しても健康影響ありません。血管がコレステロール沈着などで固くなる(つまり動脈硬化)と 少しの心拍出量の増加が血圧を過度に上げ、それ自身も問題ですが、 血圧の上昇が弱った血管部分で血管破裂などを起こすことで危険になるです。 本文にあるように適度なウオーミングアップは血管抵抗を減らすので、その後の心拍出量増加に対応できます |