下の文章を読み設問に答えよ。 ↓ ↓ ↓ Aという物質を受け取るとそれに反応それに反応し てEというタンパク質(蛋白質)を作り出す細胞 がある。この細胞がAを受け取ってからEを作るまで の過程を考えてみよう。 この細胞の細胞膜上にはAに結合する受容体(レセプター)蛋白質が存在して いる。このレセプターにAが結合するとレセプターの 細胞質内部分がリン酸化さ れ,その結果細胞質中に存在していた酵素Bがはじめてレセプターに結合できるようになる。 酵素Bは蛋白質Cを蛋白質Dに変える酵素であるが,通常は酵素活性を持つ部分が分子の内側に隠されている のでそのままでは 酵素活性を持たない。ところが,Bはレセプターと結合すると分子の立体構造が変わり, 酵素活性を持つ部分が露出して細胞質中に存在しているCをDに変えることができるようになる。 (Dはもともと細胞内に存在していない)。 Dが遺伝子E(蛋白質を作る遺伝子)の発現を調節する DNA部分に結合することにより遺伝子Eの( あ )RNAが合成される。 これを鋳型として細胞質中の( い )において,( う )RNAに よって運ばれてきたアミノ酸が順序よく結合させることにより蛋白質Eが合成される。 問1, 空欄( あ )〜( う )にあてはまるもっとも適切な語を記入せよ。 問2, 酵素Bを作る遺伝子(遺伝子B)をこの細胞に人工的に導入することにより, 酵素Bを通常より多量に発現する細胞を作成した。 この遺伝子導入細胞はもとの細胞と比べてどのような違いがある と思うか。 Aを与えないとき,およびAを与えたときのEの産生に注目して答えよ。 問3, 遺伝子Bの塩基配列を人為的に変異させ,酵素としての働きをなくした変異株B´を作成した。 ただし,この変異酵素B´は酵素Bと同様にリン酸化したAのレセプターに結合することは確認してある。 変異酵素B´を作る遺伝子をこの細胞に導入して変異酵素B´を細胞内で多量に発現させたところ, この遺伝子導入細胞は物質Aを受け取ってもEをほとんど産生しなくなった。その理由を考えよ。 (98慶応大学医学部) ↓ 解答 問1 あー伝令(m) いーリボソーム うー運搬(転移・t) 問2 Aを与えないと、たとえ酵素Bの量が多くても、Bは活性化されず、Eは産生されない。 Aを与えると、多量に発現している酵素Bが活性型に転換し、タンパク質Cがタンパク質Dに転換され、遺伝子Eの転写が促進され Eの産生は増える。 (タンパク質Cが十分存在しない場合はその反応が律速反応となりEの産生はあまり増えない。 問3 酵素B´が競争的にAのレセプターに結合してしまい、BのAへの結合による活性化が妨げられ、Eの産生がほとんど見られなくなった。 ★解説 ぺプチド系ホルモンやアドレナリン (あるいは神経伝達物質・白血球グループを活性化する物質であるサイトカイン)が 細胞膜に到達して、細胞膜のレセプターに受け止められ、遺伝子が発現していくまでの流れの概要がこの問題でよくわかる。 この図のイメージは基本として非常に重要です。 |