設問 「解糖系は細胞質基質に含まれる何種類の酵素で進められるか?」 (09独協医大) 「解糖系で消費されるATP量、生成されるATP量を答えよ」 (09奈良県立医大) ↓ ↓ (しばし考える) ↓ ↓ 解答 「10種類」「2ATP消費、4ATP生成」 解説 解糖系は初歩の問題では、結果として2ATPを生成する 一括の反応と考えておいてよい。 C6H12O6 →2C3H403(ピルビン酸)+4H(2ATP生成) しかし実際は10段階の反応(10種の酵素が関与)であり、 2ATPを消費し、4ATPを生成して、「差し引き」2ATP生成 している反応である。 ●解糖系の10段階の反応の一部を書くと以下のようになる。 物質名は覚えなくてもよいが、 前半・後半のだいたいの流れはイメージしておいたほうがよい。 ★前半(C6化合物のままATP消費によるリン酸化で分子を活性化) 1、グルコース→グルコース6リン酸(1ATP消費) 2、グルコース6リン酸→フルクトース6リン酸 3、フルクトース6リン酸 →フルクトース1,2二リン酸(1ATP消費) (ここまでは炭素数6のC6化合物) ★後半(C3化合物に分解され、同じくC3化合物のピルビン酸になる過程で4ATPとAHを生成) 4、フルクトース1,2二リン酸 →2つのC3化合物 5〜10 2つのC3化合物→2ピルビン酸+4H (この過程で4ATP生成) ●前半3の反応を進める酵素PFK1はフィードバック調節される律速酵素。 第3段階(前半の最後)を進める酵素PKF1は、解糖系反応全体の速度に影響を与え、以下のようなフィードバック調節を受ける。 これは酵素の活性中心以外に結合することにより分子の立体構造を変え反応速度を変えるアロステリック調節である。 ★反応阻害 ATPとクエン酸高濃度存在下 ATPが十分存在することは、「もう今はこれ以上ATP作る必要はない」ということである。 またクエン酸が多く存在するということは、 クエン酸回路の物質合成の回転が滞っていることであり、解糖系を進める意味ががない状況である。 その時この反応の酵素が阻害されるのは細胞代謝の自然の調整である。 ★反応促進 AMP高濃度存在下 一方、AMP(アデノシン一リン酸)高濃度存在下では反応が促進される。 AMPが生成されるのは以下のプロセスである。 ・ATP+H2O→ADP+リン酸 (ここでなかなかエネルギーが供給されずATP不足状態が続くと 細胞は緊急避難的に以下の反応を進め、なんとかATPを少し作ろうとする。 ・2ADP→ATP+AMP (AMPは高エネルギーリン酸結合がなくエネルギー供給源とならない) つまりAMPが増えることはATP不足の証拠であり、 この時、解糖系酵素PFK1が促進される(その結果ATPが合成される)のは合理的である。 ●酵素10、1も同様にフィードバック調節される。 酵素10(ピルビン酸キナーゼ)はPFK1(反応3)の同様、ATP・活性酢酸高濃度で反応阻害、AMP存在下で促進される。 酵素1(へキソキナーゼ)はグルコース6リン酸過剰状態であロステリック阻害される。つまり反応生成物が滞ったら反応を止める。 |