国公立大学前期試験お疲れ様でした。合格を祈念しています。 後期試験のある方のために偶数日に発行を続けます。 1、ヒトに感染するコロナウイルスは主にenvelop(膜)と遺伝子RNAと、S、M、E、Nという4つのタンパク質を持つ。SMEは膜に存在し、NはRNAに結合する。太陽のコロナ(corona)に似ていることから命名のもととなったSタンパク質がヒト細胞(肺・気道・小腸上皮細胞など)の細胞表面にあるACE2(アンジオテンシン転換酵素2)をウイルスレセプターとして吸着する。 2、3、侵入・脱殻 インフルエンザウイルスとほぼ同じ 4からはインフルエンザウイルスと違うところが多いので比較しながら見てください) 4、核内には移動せず、細胞質内(核以外の場所)でウイルスRNAが複製される。 (厳密にいうとこの複製と翻訳の仕組みがインフルエンザウイルスとは若干異なるが省略) 5、翻訳、N,S、E、Mなどウイルスタンパク質がリボソームで翻訳され、小胞体の膜などに配置される。 6、出芽、小胞体、ゴルジ体、あるいはその中間に位置するinternal compartmentの膜上にS、E、Mなどが並んだ部分に、Nと結合した複製されたRNAが侵入し出芽する。インフルエンザウイルスの出芽が細胞膜表面であるのに対し、コロナウイルスの出芽は細胞内。 7、細胞が破壊され、細胞内で出芽の上完全なウイルスになったものが細胞外に出て、次の細胞を目指す。 今、ワクチンなど、予防の目標とされているのはSタンパク質です。ただインフルエンザの治療薬のタミフル・リレンザのように細胞からの脱出を防ぐプロセスはないので、そのアプローチの治療は難しい。 今、緊急使用が検討されているアビガンは4のRNA複製を阻害するものです。(あくまでも緊急使用です。副作用もあることは留意しなければなりません) ワクチンや他の予防・治療法は未開発です。したがって、私たちは予防に心がけるとともに、感染した場合はヒトの免疫系の力でウイルスの増殖を抑えることが基本となります。 (なお、2月22日に厚生労働省が緊急使用をする方向性を打ち出したインフルエンザ治療薬「アビガン」は、インフルエンザの過程4のRNA合成阻害薬であり、同様の作用が、新型コロナウイルスにも有効との考えに基づくものと思われます。なお使用にあたっては、副作用に留意しなければなりません) |