問(01京都大学後期) ニワトリのヒナが危機におちいり、鳴き叫びながら羽をばたばたさせていると、母鳥は強い警戒行動を示す。 母鳥はヒナが危機におちいっていることを、どのように知るのだろうか。これを調べるため次のような実験をした。 実験1. ヒナの脚をくくり、半球形の透明なガラス容器をかぶせ、 ヒナの姿は見えるが声は聞こえないようにしたところ、 ヒナが鳴き叫びながら羽をばたばたさせているにもかかわらず、 母鳥は警戒行動を示さなかった。 実験2. ヒナの脚をくくり、ヒナと親鳥の間についたてを置いて ヒナの鳴き叫ぶ声は聞こえるが姿は見えないようにしたところ 母鳥は警戒行動を示した。 実験3. ヒナの脚をくくり、ガラス容器をかぶせ、ついたてを置いて、 ヒナの姿は見えず、鳴き叫ぶ声も聞こえないようにしたところ、 母鳥は警戒行動を示さなかった。 問1.実験1〜3より、母鳥の警戒行動は、ヒナによって与えられるどのような刺激によって起こると考えられるか。 問2.母鳥が警戒行動を起こすための刺激は、一般に何と呼ばれているか。 問3.母鳥の警戒行動は、それまでに経験がなくとも、問1で示されたような単純な刺激がありさえすれば起こる。こういった行動を何と呼ぶか。 問4.ニワトリの祖先の起源地は、東南アジアの森林地帯だとされている。さて、母鳥の警戒行動は、この環境にどのように適応していると考えられるか。 ↓ ↓ ↓ (しばし考える) ↓ ↓ ↓ 「解答」 問1、ヒナの泣き叫ぶ声による。 問2、信号刺激 問3 本能行動 問4 東南アジアの温暖な森林地帯には下草が繁茂しているので、ヒナの姿を見るのは困難だが、鳴き声なら聞くことができる。 ●解説 京都大学は日本の動物行動研究の先駆者である日高敏隆氏、今西錦司氏がいたこともあり動物行動がよく出されます。もちろんどの大学でも出されます。 動物行動の実験考察問題で論点となるものを挙げたい 論点1 「本能(生得的行動)か学習(習得的行動)か?」 実験のポイント 生まれた直後に親から離した集団と、親とともに生活し続けた集団を比較する。両者で見られるのは「本能」。親とともに生活し続けた集団でのみみられる行動は「学習」である。 各実験考察の内容ごとに判断するのだが、前提知識として、あくまでも一般的傾向だが以下のような「傾向」があることを知っておくとよい。 生命維持の根幹にかかわる行動(危険回避)は本能、そうでない行動(餌の獲得、少し飢えてもすぐには死なない)は学習である傾向 論点2 「行動を引き起こす刺激はどの感覚情報によるものか?」 実験のポイント 注目する感覚ABについて「AありBなし」と「AなしBあり」の実験を比較する。これでA、Bどちらの感覚情報が重要なのかがわかる。 (設問の実験1・2がそれに相当します。実験3は両感覚情報ともなしにする対照実験です) 論点3 「遠い場合に使う刺激情報と、近い場合に使う刺激情報を組み合わせている場合あり」 ミツバチが仲間の伝えた特定の花の情報をもとに花を訪れる場合 1、非常に遠い場合は8の字ダンスの情報 2、(ある程度)遠い場合は、花の色の情報(視覚) 3、接近すると花の蜜の匂いの情報(嗅覚) と使いわけます。 ガの雄が雌に接近して交尾する行動の場合、 1、遠くからは雌の性フェロモン(嗅覚) 2、接近すると雌の形や羽ばたきの音(視覚・聴覚) と使いわけます。 これも一般的傾向なので例外もあるので、実験ごとに考えてほしいですが、 昼行性 遠ー視覚情報 近ー嗅覚情報 夜行性 遠ー嗅覚情報 近ー視覚情報 などが多いです。 この2感覚情報の使い分けを「論点2」の実験考察と組み合わせて出す問題もあります。その場合でも以上の原則を知っておけば十分対処できるはずです。 |