-------------------------------------------------------------------------------- ★設問 ショウジョウバエの各体節の特徴を最終的に決めていくのに関与している遺伝子を何というか? また、その遺伝子が異常発現することで起きる変異として有名なものの名称と2つあげ、それぞれを説明せよ。 ↓ ↓ ↓ (考える) ↓ ↓ ↓ 答 ホメオティック遺伝子(homeotic gene) アンテナペディア(antennapedia)突然変異 (触角antennaの場所に足pediaができる) バイソラックス(bithorax)突然変異 (翅の生える胸部第2体節が繰り返すため、 通常の2枚翅でなく、4枚翅となる。bi-は2、thorax胸部でギリシャ語由来) 解説 ショウジョウバエ(そしてマウスやヒトの)頭尾軸に沿った各体節形成に関わる遺伝子を 「ホメオティック遺伝子」という。この言葉を知っておくだけで十分で入試的にクリアできる場合が多いが、 更に深く知らないと混乱を生じる場合もあるので解説する。 「ホメオティック遺伝子」の類似語として ・ホメオーシス(homeosis) ・ホメティック突然変異(homeotic mutation) ・ホメオボックス(homeobox) ・ホメオボックス遺伝子(homeobox gene) ・ホメオドメイン(homeodomein) ・ホメオドメインタンパク質(homeodomein protein) ・Hox 遺伝子 ・non-Hox遺伝子 などの言葉を、研究の歴史・意味の示す範囲に注意しながら知っておきたい。 まずhomeoはhomoと同じで「同じ」「類似」を示すギリシャ語である。たとえば恒常性(ホメオスタシスhomeostasis)はhomeo(同じ)+stasis(位置・状態) という意味である。そのことを前提に考えていく。 1、まず昔からホメオーシス(homeosis)という突然変異が時折起きることが知られていた。 -sisは状態を示す接尾辞である。 これはある体節が、別の体節と同じになってしまう変異現象で昆虫で知られていた。 2、ショウジョウバエ研究者のルイスが、1976年、世界のショウジョウバエのホメオーシス(バイソラックスやアンテナペディア) を集め、 かけ合わせることで、体節を決める複数の遺伝子群があることを予言しホメオティック遺伝子(homeotic gene)と命名した。 1983年には別の研究者が その遺伝子群を見つけた。-ticは名詞を形容詞化する接尾辞であるだけなので、 homeosis(名詞)・homeotic(形容詞)は同義である。 よってホメオーシスとホメオティック突然変異は同義であるが、ルイスの功績にちなんでホメオティック突然変異の言葉を用いることが多い。 3、各体節の特徴を決める複数(ジョウジョウバエでは8個) のホメオティック遺伝子に共通に含まれ、 どの生物においても共通性の高い180塩基の部分をホメオボックス(homeobox)といい、 それはそれが転写・翻訳されたタンパク質の60アミノ酸配列(ホメオドメインhomeodomain)を決定する。 ホメオドメインはDNAに結合する形をしており、他の遺伝子の転写促進(スイッチON)を行う。 -boxは範囲・枠を意味し、180塩基の部分の枠のニュアンス。 domainはdomestic家庭の(例DV=domestic violence家庭内暴力)と同じ語源で「範囲」「領域」を示す。家庭も1つの領域ですね。 4、タンパク質のDNA結合部位である ホメオドメインを指定するホメオボックスはホメオティック遺伝子の他にも体の形づくりを決める細かい遺伝子にも存在する ことがわかり(たとえば眼の形成を 促すマウスのPax6遺伝子)、それらを総称してホメオボックス遺伝子と呼ぶ。 ホメオティック遺伝子はホメオボックス遺伝子の一種である。 5、ショウジョウバエの8個のホメオティック遺伝子を基準に、他の生物でみつかるホメオティック遺伝子を2分類した。 ・Hox遺伝子 ショウジョウバエで同じ染色体上に8個整然と並び、頭尾の各体節の遺伝子発現に関連する遺伝子と、 それと相同な他の生物での遺伝子。他の生物においても同じ染色体上に一列に整然と並ぶ。ホメオティック遺伝子とほぼ同義です。 ・non-Hox遺伝子 ホメオボックス遺伝子であるが、ショウジョウバエのHox遺伝子と相同ではなく、 いろいろな染色体に散在する遺伝子 |