設問(01京都大/後期) 動物の行動は、驚くほど多様であるが、その多くは「より多くの子孫を残す」ための適応だと解釈できる。 また、植物は自身の成長には直接役立たない物質を生産することがある。 これらの物質も「より多くの子孫を残す」のに役立っていると考えられる。このような観点から以下の問いに答えよ。 問1.ユリカモメの卵の殻の外側は、淡黄褐色の地色に斑点があり迷彩になっているが、内側は白い。 ヒナが孵(ふ)化すると、そのたびにユリカモメの親は卵の殻を口にくわえて飛び立ち、巣の外に捨てる。 卵の殻は非常に薄く、簡単に壊れるのでヒナがけがをする恐れはない。なぜ卵の殻を運び出すのか。 問2.アフリカの大草原で集団を作る多くの草原性の哺(ほ)乳動物は、一年の限られた時期にいっせいに出産する。 なぜ、別々の時期に産まないのだろうか。考えられる理由を2つ記せ。 問3.果実が熟すと、果皮が赤、黄、濃青など目立った色に変わるものが多い。このような現象は植物にとって何の役に立つのか。 問4.植物の葉や種子には、アルカロイドやシアン化合物など毒物が含まれていることがある。なぜ、植物はこれらの物質を生産するのか。 ↓ ↓ ↓ ↓ (しばし考える) ↓ ↓ ↓ 問1 孵化したあとは,卵殻の内側の白が目立ちやすく、ヒナが捕食者に発見されやすくなる。 問2 (1)食草の豊富な季節に出産すると、移動能力の小さい幼時に餓死する危険が少ない。 (2)他種も含め多数の子が生まれると自分の子が捕食者に襲われる確率が減少する。 問3 果実が熟するころに中の種子も成熟するので,目立った色に変わり、捕食されて種子を広く散布する。 問4 毒物を含むことによってその植物には望ましくない捕食を避けることができる。 解説 ●問1 「そもそも卵の殻の内側もまだらにしておけば」と思うかもしれませんが、 鳥の尿酸排出なのでどうしても卵の内側には尿酸(白)が付着して残るので、卵の殻の中が白くなってしまうのは宿命です。 だから巣から捨てる本能が発達してきた(その本能を強く持っていたものが生き残ってきた)のです。 ●問3・4に関わる発展 「アリ植物」 動物行動と植物がらみのトピックであるにも関わらずまだ入試問題に出ていないのが「アリ植物」。 今年こそ、どこかの大学で「出題アリ」と予測しています。 「問3」のように被子植物は果肉(植物学養護では「果皮」)を哺乳類・鳥類などに食べてもらい、種子を散布してもらいということで「共進化」してきた。 しかし、「問4」のように光合成に必要な葉や種子は食べられたくないためにが、毒物を含ませて防衛しているものもいる。 さらに特に熱帯性の植物の中には、アリを味方につけてその植物を食害する動物から身を守っているものがいる。 「アリ植物」といわれるこの種の植物は、アリの住処となる空洞を茎に作ったり、 蜜を分泌してアリの餌を与えることでアリをひきつける。ひきつけられたアリはアリ植物に常駐することで他の昆虫などからの植物の食害を防ぐ。 また、アリ植物に常駐したアリは他の昆虫などを採取してその植物にある巣に戻ってきて糞をする。 その糞の中には、他の昆虫由来の窒素分が含まれ、それがアリ植物の周りの土壌に落ちることで土壌に窒素分を供給し、「やせた(NO3-)が少ない土地」でも生育できるようになる。 高度な相利共生ですね。 |