★設問(2006福岡大医学部・他・一部改) ヒトの遺伝子Xが組み込まれたプラスミド(組換えプラスミド)を得るために、次の実験を行った。 実験に使用したプラスミドは、抗生物質アンピシリンを無毒化する ampR遺伝子、および抗生物質カナマイシンを無毒化するkanR遺伝子を持っており、kanR遺伝子の中央には図の6塩基を認識する制限酵素で切断される場所(図の黒→)がある。 操作2 プラスミドをこの制限酵素で処理すると、図の黒→の部分が切断された。 操作3 1の断片、2のプラスミドを混合し、DNAリガーゼでつなぎ合わせ、組換えプラスミドを得た。 操作4 操作3で得られた組換えプラスミドを大腸菌に取り込ませた。 操作5 操作4で得られた大腸菌を寒天平板培地上で培養し、コロニーの形成を調べた。 問1 このような実験に使うヒトDNAは核内にあるDNAをそのまま使うのでなく、ある素材からある方法で作成する。その素材・方法とその理由を述べよ。 問2 操作5において、組換えプラスミドを取り込んだ大腸菌のコロニーを選ぶ方法として、以下(1)〜(3)から正しいものを選べ。 (1)アンピシリンを含む寒天培地で生育するコロニーを、カナマイシンを含む寒天培地に植え付けると、コロニーが形成されないもの。 (2)カナマイシンを含む寒天培地で生育するコロニーを、アンピシリンを含む寒天培地に植え付けると、コロニーが形成されないもの。 (3)アンピシリンとカナマイシンの両方を含む寒天培地でコロニーが形成されるもの。 ↓ ↓ ↓ (考える) ↓ ↓ 答 問1 細胞質中のmRNAから逆転写酵素で作ったDNA(cDNAという)。 核内でからみついたDNAからその特定遺伝子部位だけを取り出すのは困難であるが、 細胞質中のmRNAならば各遺伝子ごとに断片化しているので取り出しやすい。またmRNAは核内スプライシングされた後で イントロンを含まないため、イントロンがなく読みとばす能力のない大腸菌などで発現しても、正常なタンパク質が合成できる。 問2 (1) 操作4の時点で大腸菌には3種がある。 a組換えプラスミドが戻らなかった大腸菌 →アンピシリン・カナマイシン抵抗性がなく、これらを含む培地では生育できない。 b遺伝子Xを取り込まず、プラスミドの断片自体が再結合したプラスミドのみが大腸菌に戻ったもの →アンピシリン・カナマイシンともに抵抗性がある。 c遺伝子xを取り込んだプラスミドが戻った大腸菌 (これが実際に求めるもの) →アンピシリン抵抗性はあるが、カナマイシン抵抗性遺伝子の部分は遺伝子Xの取り込みで機能停止したため、カナマイシン抵抗性はない。 |