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レベルアップ研修
渡邉肇子先生 特別講座(4) 「消化器と循環器」 ![]()
消化器について ![]() 肝臓 1.肝臓のしくみ ●肝臓は、人体の中で最大、最重量、最高温度の臓器である。 その主なはたらきとして (1)栄養分を活用できる形に分解・合成する (2)グリコーゲンや脂肪を貯蔵する (3)有害物質を解毒する (4)胆汁を生産する 肝臓は右胸肋骨の下側にあり、成人男子で約1200g、女子で1000gもある人体最大の臓器です。 多量の血液を含んでいるためからだの中で最も高温で、暗紫色をしています。 また、肝臓は右葉と左葉に分かれており、両葉からそれぞれ一本ずつ肝管という管が走っています。 これは肝臓がつくった胆汁の輸送管で、胆嚢に胆汁を送り込みます。 そして肝臓の基本単位は、数十万個の肝細胞が、ひもでつながれたような形でまとまった1〜2立方oほどの大きさの肝小葉です。 2.肝臓のはたらき ・胆汁の生産 腸内の消化・吸収を助ける胆汁をつくります。 1日に0.5〜1リットルの胆汁がつくられます。 胆汁は胆嚢でいったん蓄えられてから十二指腸に送られます。 ・赤血球の分解 古くなった赤血球の中のヘモグロビンを分解して、胆汁の材料になるビリルビンという物質をつくります。 また肝臓に含まれる鉄分は、新しい赤血球の材料になります。 ・毒の処理 アルコールを分解したり、毒物を無害にして胆汁の材料にします。 また、からだを構成しているタンパク質も、分解、合成がおこなわれます。 その際に、人体に有害なアンモニアが発生しますが、肝細胞はこれを尿素に変えて血液中に放出し、腎臓から尿として排出されるしくみになっています。 ・グリコーゲンの貯蔵 ブドウ糖をグリコーゲンとして蓄え、必要なときに糖に戻します。 ・ビタミンの貯蔵 ビタミンをはたらきやすい形で蓄えます。 ・栄養の送り出し 蓄えた栄養をからだに送り出します。 3.栄養素をつくり変えるしくみ ●からだが利用しやすい栄養素に 肝臓は必要に応じて糖から脂肪をつくったり、逆にアミノ酸や脂肪から糖をつくることもできます。 そのほか、ビタミンB1をコカルボキシラーゼという物質に変えて供給するなど、いろいろなビタミンをつくり変える役割もになっています。 このように肝臓は摂取した栄養分をからだが利用できる形に変えて供給するという、化学工場の役割を果たしています。 ・炭水化物 ご飯やパンなどの炭水化物は、唾液中のアミラーゼという消化酵素でデキストリンに変えられ、十二指腸のアミラーゼにより麦芽糖に変わり、小腸でマルターゼによってブドウ糖(グルコース)に変わります。 糖類は、小腸の消化酵素でガラクトースや果糖などの単糖類に変わります。 そして肝臓に入った単糖類は、ブドウ糖に統一され、必要に応じて全身に供給されます。 また、ブドウ糖は貯蔵には不向きなため、グリコーゲンという単糖類の集合体の形で肝臓に貯蔵され、血液中の糖が減るとブドウ糖の形に戻って、血液中へ送り込まれます。 ・タンパク質 肉や魚、大豆製品などに含まれるタンパク質は、胃で消化酵素ペプシンによってペプトンという、より分子の少ない物質に変えられ、十二指腸や小腸で各種アミノ酸の小さい分子に変えられ吸収されます。 肝臓では血液中の糖の増減に応じて、アミノ酸や脂肪酸からブドウ糖をつくり、血液中に送り出します。 またアミノ酸の一部は、からだに合ったタンパク質につくり変えられ、とりすぎたタンパク質は体内に貯蔵されてます。 脂肪は一部は肝臓に送られますが、大部分はリンパ管から血管に流れ込み、全身の細胞組織に蓄えられます。 ・脂肪 油脂類や肉の脂身にある脂肪は、十二指腸で胆汁によって吸収されやすい形にされたあと、小腸で消化酵素リパーゼのはたらきにより、グリセリンと脂肪酸に分解されます。 この2つは別々に吸収されたのち、再び脂肪に合成され肝臓へ運ばれます。 肝細胞では脂肪はコレステロールをつくる原料になります。 肝細胞には3〜5%の脂肪が含まれており、常に新しいものに入れ替わっています。 コレステロールは、細胞膜やホルモンをつくるたいせつな物質です。 ・ビタミン 野菜や果物に豊富に含まれるビタミン類は肝臓に貯蔵され、ビタミンB1がコカルボキシラーゼに変化するなど、体内で利用しやすい形につくりかえられます。 4.アルコールを分解するしくみ ● アルコール分解も解毒の一種 胃や腸で摂取されたアルコールが肝臓に集まってくると、肝臓は酵素の力によってこれをアセトアルデヒドに、さらに酢酸にと分解し、最終的には二酸化炭素と水にして、息や尿とともに体外に排出します。 [病気の知識] ・アルコール性肝臓障害 ・脂肪肝 ・肝硬変 ・肝炎(A型ウイルス肝炎・B型ウイルス肝炎・C型ウイルス肝炎・慢性肝炎) ・肝臓がん 胆嚢 1.胆嚢のしくみ その主なはたらきとして (1)胆汁を濃縮して貯蔵する (2)胆汁を必要に応じて排出する ・胆嚢は胆汁の濃縮庫 胆嚢とは肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中にある、長さ10cm、容積約30〜50mlの西洋ナシに似た形をした袋状の器官です。 胆汁は90%以上が水分でできていますが、ここではその水分、塩分が吸収され、およそ5倍から10倍に濃縮されたうえで貯蔵されます。 ・脂肪分の消化吸収を助ける胆汁 胆汁は腸内の消化吸収に欠かせない存在ですが、胆汁そのものに消化吸収酵素はありません。 食物中の脂肪は、膵液に含まれるアミラーゼやリパーゼなどの消化酵素によって、脂肪酸とグリセリンに分解されますが、このとき胆汁は消化酵素がより効率的にはたらきかけるよう活性化させる性質を持っています。 また、脂肪が分解してできた脂肪酸を、腸内でより吸収しやすい形に変えるのも胆汁の仕事です。 水に溶けない脂肪酸はそのままでは吸収されないため、胆汁が作用して、水に溶ける形に変えるのです。 ・胆汁が排出されるタイミング 十二指腸に脂肪分の多い食物が入ってくると、脂肪に含まれるアミノ酸や脂肪酸の刺激により、十二指腸および空腸からコレシストキニンという消化管ホルモンが分泌されます。 このホルモンの刺激を受けると、胆嚢は平滑筋を収縮させて胆汁をしぼり出すようにして排出します。 胆汁は総胆管を通って十二指腸に達し、そこで膵臓から送られきた膵液と合流し、脂肪を消化吸収する手助けをします。 胆汁は食事の約1時間後から排出されはじめ、排出量は約2時間後にピークに達し、その後徐々に減っていきます。 2.胆汁のはたらき その主なはたらきとして 脂肪の消化吸収を助ける ・成分は胆汁酸や胆汁色素 成人で1日に約1リットルほど肝臓から分泌される胆汁は、弱アルカリ性の黄色い液体です。 肝臓でつくられたばかりの胆汁は黄色ですが、胆嚢で濃縮されると黒っぽい色に変化します。 胆汁には胆汁酸、ビリルビン(胆汁色素)、コレステロールなどの成分が含まれます。 胆汁酸は十二指腸で乳化された脂肪が、小腸でグリセリンと脂肪酸に分解されて吸収されるのを助けます。 ・ビリルビンは破壊された赤血球の一部 胆汁の成分の1つでもあるビリルビンとは、古くなって破壊された赤血球の1部で、胆汁の黄色い色はビリルビンの色素によるものです。 通常、ビリルビンは腸に入り便と共に排泄されます。 膵臓 1.膵臓のはたらき その主なはたらきとして (1)膵液を分泌する (2)血糖値を調整する ・胃の裏側に位置する長さ15cmの臓器 胃と脊椎の間にあり、十二指腸に抱え込まれるような場所にある膵臓は、長さ15cm、厚さ2cmほどのオタマジャクシのような形をした器官で、黄色い色をしています。 胃のちょうど裏側に位置するため、体表からは触りにくく、膵臓に炎症が起こると、腹部の左上にあたりに痛みを感じます。 ・膵液を分泌する外分泌機能 膵液にはタンパク質を分解するトリプシン、デンプンを分解するアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼなど、多くの消化酵素が含まれており、胃酸によって酸性に傾いた内容物の中和や、胆嚢から分泌される胆汁の助けを借りながら、腸内での消化活動をスムーズにおこないます。 膵液が1日に分泌される量は、成人で1日に約0.7〜1リットルです。 食物が胃から十二指腸に入ると同時に、十二指腸では消化管ホルモンが血中に分泌され、これが膵臓を刺激して、膵臓が十二指腸にある十二指腸乳頭から分泌されるしくみになっています。 ・ホルモンをつくる内分泌機能 膵臓にはランゲルハンス島と呼ばれる特殊な細胞の集まりがあり、その細胞集団からインスリンとグルカゴンという正反対の性質を持つ2つのホルモンが分泌され、血糖値を微妙に調整しています。 ランゲルハンス島のB細胞から分泌されるインスリンは、血液中のブドウ糖がエネルギー源として消費されるのを促したり、脂肪に変えて脂肪組織に蓄えたり、グリコーゲンに変えて肝臓に蓄えるはたらきがあります。 またA細胞からの分泌されるグルカゴンは、全身の脂肪組織の脂肪をブドウ糖に変えたり、肝臓に蓄えられたり、肝臓に蓄えられているグリコーゲンを、ブドウ糖に戻すはたらきがあります。 2.膵液が分泌されるしくみ ・ホルモンの操作で分泌される膵液 膵液は自律神経のはたらきで分泌されます。 つまり食物を見たり、臭いを嗅いだだけで分泌されますが、膵液分泌は基本的には、ホルモンによって操作されています。 胃から送られてきた消化物には、まだ胃酸の影響で酸性が残っており、膵液中の消化酵素の多くはその力を発揮することができません。 しかし、消化酵素は導管を通る間に炭酸水素ナトリウムを主体とする電解質や水分と混じって、弱アルカリ性の液体になるため、消化物の酸性が中和され、消化力を発揮することができるのです。 ・膵臓が膵液で溶けない理由 膵液は非常に強力な消化液ですから、膵臓自体を溶かしてしまっても不思議ではありません。しかし膵臓が溶けることがないのは、アミラーゼとリパーゼ以外の消化酵素が、十二指腸に入るまで不活性の状態にあるからです。 たとえばトリプシンは、膵臓内ではトリプシノーゲン、エラスターゼはプロエラスターゼという不活性の形で存在します。 これらのほかに、タンパク質分解酵素や脂肪分解酵素も、膵臓の中では不活性な状態で存在します。 3.血糖量の調節のしくみ ・血糖値とは ヒトの血液中に含まれているグルコースを血糖といい、その量を血糖値といいます。 血糖値は、ふつう血液100mlあたり80〜100mgです。 この血糖量は、間脳の視床下部や膵臓の調節によって調整されています。 [インスリンのはたらき] ・筋肉組織にブドウ糖(グルコース)を運ぶ。 ・余分なブドウ糖(グルコース)を脂肪組織に蓄える。 ・ブドウ糖(グルコース)をグリコーゲンに変えて、肝臓や筋肉に蓄える。 [グルカゴンのはたらき] ・全身の脂肪組織の脂肪をブドウ糖(グルコース)に変えられる。 ・肝臓に蓄えられたグリコーゲンをブドウ糖(グルコース)に戻す。 [病気の知識] ・糖尿病(I型糖尿病・II型糖尿病) ・低血糖症 循環器について 血液とリンパ液の循環を行う器官の集まりです。往路の動脈と復路の静脈を持つ血管系と一方通行のリンパ系の2系統あります。 ![]() 1.血管系 個々の細胞に栄養や酸素を供給し、老廃物を運び去る血液の循環を担います。 中心はポンプの役割である心臓です。 送り出される血液が通る動脈と、戻ってくる血液が通る静脈は末端で毛細血管でつながっています。 血液循環にはさらに2つの系統があり、肺循環(小循環)は約4秒、全身を巡る体循環(大循環)は50〜60秒かかります。 動脈血は酸素が豊富できれいな鮮血色、静脈血は二酸化炭素を含む汚れた暗赤色をしています。 ・全身をめぐる体循環 血液は、心臓の左心室を出発して大動脈→動脈→小動脈→毛細血管という経路をたどり、臓器や筋肉をはじめとした全身のあらゆる部分に酸素や栄養分を運びます。 からだの各部分に酸素と栄養分を供給した血液は、代わりに二酸化炭素や老廃物を受け取り、小静脈→静脈→大静脈というルートを経て再び心臓に戻ってきます。 この血液の流れを体循環といいます。 脳のある上半身と、臓器の集中する下半身への動脈は途中で分かれ、心臓に戻る大静脈もまた、上半身からの血液は上大静脈、下半身からの下大静脈と、別々のルートを経由します。 しかし2本の大静脈はともに右心房に流れ込み、合流することになります。 ・肺をめぐる肺循環 全身をめぐって酸素を放出し、代わりに二酸化炭素をたっぷり含んだ血液は、心臓に戻った後、右心房、右心室、肺動脈を経由していったん肺へ回り、二酸化炭素と酸素を取り換える「ガス交換」がおこなわれます。 この循環を肺循環と呼びます。 ガス交換によって酸素を受け取った血液は、肺静脈を経由して心臓に戻り、左心房、左心室を通り、また全身へと送り出されます。 すべての血液は、心臓を起点に体循環と肺循環を交互に繰り返しながら、ずっと体内を回り続けているのです。 2.心臓 その主なはたらきとして 血液を全身に送り出す ・二心房二心室からなる心臓 心臓は人間の正中線よりやや左にあります。 大きさはその人のこぶし大で、重さは約200〜300gで心筋という筋肉からできています。 成人男性で280g、女性で230g、俗に言うハート型をしています。 内部は、右側が右心房と右心室、左側が左心房と左心室という4つの部屋に分かれています。 ・血液を全身に循環させる 全身をめぐって戻ってきた血液は、大静脈→右心房→右心室→肺動脈→左心房→左心室→大動脈という順序で流れていきます。 このとき、血液が逆流して戻るのを防ぐため、心臓には右房室弁、肺動脈弁、左房室弁、大動脈弁という4つの弁がついています。 また血液を全身に送り出す左心室の壁は、特に大きな力を必要とするため、右心室の3倍もの厚さの筋肉でできています。 ちなみに1分間に左心室から送り出される血液の量は、およそ5リットル。 1日に7200リットルにもなり、かなりの重労働を強いられていることになります。
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