エンビロン誕生のきっかけ


Dr.フェルナンデスの著書
「デスモンドフェルナンデスのスキンケア・ハンドブック」より

私たちの周囲には、医者・化粧品メーカーの研究者・エステティシャン・ビューティシャン・美容ライターなど、様々なスキンケアの専門家がいます。

これらの人たちに、「もっとも有効なスキンケアとは、なんでしょうか?」と尋ねてみて下さい。

恐らく多種多様な答えが返ってくることでしょう。


答えが多種多様になる理由は、こうしたスキンケアの専門家のみなさんでさえ、皮膚の基本的な仕組みを無視しがちだからです。

ましてスキンケアの専門家でないみなさんは、皮膚についての科学的な情報がなかなか得られないのですから、ファッショナブルであったり話題を呼んでいたりするスキンケア商品に魅力を感じるのは当然のことでしょう。


しかし、スキンケアの基本となる、皮膚についての基礎理論は、決して流行に左右されるものではありません。

流行に左右されて、皮膚のダメージをさらに大きくしないためにも、皮膚についての基本的な知識と情報を得ることは、とても大切なことなのです。


私たちが住んでいる地球環境は、かつてのような優しい環境ではなくなりました。

私たちが生きているのは、産業廃棄物で汚染され、その汚染が直接私たちの肌に影響を与えるようになった地球環境の中なのです。


そうした環境の変化は、地球の宇宙服ともいえるオゾン層までもほころび始めさせています。

私の住む南半球では、南極大陸の約2倍の広さのオゾンホール=オゾンが薄くなった部分が発生しています。

それは北半球でも同じです。

北半球には北極海があるため、オゾンホール発生のメカニズムは南半球より複雑なのですが、年々オゾン層が薄くなっていることに変わりはありません。

オゾン層が薄くなり、紫外線の地上への照射量が増加した結果、私たちは強烈な紫外線とその紫外線による活性酸素(フリーラジカル)の攻撃を受けることになりました。


実は1920年頃までは、積極的に日焼けすることは、一般的に戒められていました。それが道徳的な理由からであれ宗教的な理由からであれ、肌はある程度、日光から守られていたのです。

ところが、1920年代にココ・シャネル社が、小麦色に日焼けした肌に引き立つ真っ白なドレスをデザインしたところ、これが裕福な階層で大流行しました。

これをきっかけに、次第にさんさんと輝く太陽の光を浴びることが裕福さと健康の象徴とされるようになりました。


しかし、日焼けした肌が健康そうに見えた時代は終わりました。

太陽の強力なエネルギーが、私たちの肌を少しずつ破壊しているのだという認識を持たなければならなくなりました。

日光によるダメージ、つまり紫外線とフリーラジカルによる老化=光老化(ひかりろうか)です。


紫外線とフリーラジカルによるダメージは、長期間にわたって蓄積され、10年後、20年後に、取り返しのつかないダメージとして、初めて表面化します。

それを防ぐには、子供の時から太陽の光に気を付けなければなりません。それが光老化の厄介な問題です。

健康そうに見える日焼けした肌には、やがて醜い光老化の兆しが現れてきます。

それを、私たちは自然の老化だとこれまで考えてきました。

しかし、そうではありません。人間の老化の約8割は光老化が原因なのです。

今では、光老化と自然の老化は、明確に区別して研究されています。


光老化は、肌のシミやシワを作り出すだけではありません。

恐ろしいメラノーマ=黒色腫(こくしょくしゅ)という皮膚ガンの原因でもあるのです。

光老化の問題は、これからますます深刻になってゆきます。西暦2000年に生まれる子供では、75人に1人の割合で、将来メラノーマになるだろうと予測する学者もいるほどです。

私がスキンケアの重要性に関心を抱いた直接のきっかけも、このメラノーマでした。

1979年と1980年に、私の患者だった2人の若者がメラノーマで死亡したのです。そのときから私は、紫外線と皮膚のダメージの関連性について研究を始めました。


研究を進めてゆく中で、皮膚を紫外線によるダメージから守るためには、ビタミンAと抗酸化作用を持つビタミン類が有効であると確信するに至りました。

つまり、光老化は予防できると確信したのです。


そこで世界的に知られた化粧品メーカー2社に、私の研究成果をふまえたスキンケア商品を開発してもらえないかと依頼しました。

しかし、2社の化粧品メーカーはどちらも、私の理論を受け入れてはくれませんでした。

いま思えば、当時、そのようなスキンケア理論は存在していなかったのですから、断わられても仕方のないことでした。


しかし、たとえ化粧品メーカーは認めなくとも、私の確信は揺らぎませんでした。

私は独自にビタミンAや抗酸化ビタミン類を含むスキンケア製品を調合し、テストを重ねました。

そのテスト結果は、私の理論をさらに強固に裏付けてくれるものでした。

そこで私は、スキンケア商品だけを製造する会社を設立し、「エンビロン」というスキンケア商品の販売を開始したのです。

1988年のことでした。


世界の有名化粧品メーカーは、いつまでも従来の化粧品の枠から離れられず、「ある特別な植物から抽出した秘密の成分」といった類のコマーシャル用のフレーズを使用していますが、このような考え方は、もう変えなければなりません。

21世紀を生きる私たちに必要なスキンケア商品は、既存のコスメティックス=化粧品学ではなく、コスメシューティックス=薬学と医学情報を組み入れた化粧品学から生まれるスキンケア商品です。

つまり、必要十分な試験期間を設けて客観的かつ科学的にテストされ、「スキンケアに有効であると証明された活性成分が配合された」スキンケア商品でなければならないのです。


皮膚のメカニズムは、ミステリアスです。

そのミステリアスな皮膚のメカニズムを、私のこれまでの20年間の経験と研究をもとに、スキンケアの専門家ではないみなさんにもできるだけ分りやすくお伝えしたい----それが、この本を書いた私の願いです。



「デスモンド フェルナンデスのスキンケア・ハンドブック」より


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